ビル事業計画に必要なデータと解説
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土地取得費

土地の価格は様々な条件が絡み合い、時代的な状況を反映して、形成されています。実際の取り引きをしようとすれば、通常の物品を売買するときのように、売り手と買い手の立場により、駆け引きが行われるのは当然です。しかし、土地というのは特殊な商品であり、同じ要件を満たす土地は、詳細にいうとこの世に二つとないため、適正価格を客観的に把握しようとすれば、不動産鑑定士などの専門家に、鑑定を依頼する事が必要になります。
ここでは、土地評価の考え方と、専門家に依頼しなくても、簡易的に客観的評価ができる方法について解説します。

(1)土地評価の方式へ
(2)公的土地評価へ
(3)土地価格の簡易算出法へ
(4)仲介手数料へ

(1)土地評価の方式

評価の方式には、原価法、比較法、収益還元法の3方式があります。
原価法は、難しくいうと「価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、これに経年による原価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法」という事になりますが、要は、宅地造成やマンション販売などで、販売用不動産に加工した場合、マーケットから見て売れる商品とするには、土地の原価がいくらなら成り立つか、という分譲事業における事業収支計画から見て成立する土地価格の逆算手法です。
たとえば、宅地造成事業の場合
(素地価格+造成費用+通常の付帯費用)/有効宅地化率=積算価格
となり、この計算で算出された積算価格が、市場性から見て売れる値づけをするためには、素地価格がいくらでなければ成立しないか、という考え方です。
比較法は、周辺の取り引き事例を参考にし、事例ごとの事情補正や、時点修正を行い価格の算出を行う方法です。
収益還元法は、対象不動産を利用した場合、そこから生み出される収益に対し、一定の利回りを確保するには、どのくらいの投資が限界かを算出する方法です。
たとえば、ビル賃貸事業の場合、
(経常収入−経常支出)/還元利回り=収益価格
となり、この式で算出される収益価格を原価法でいう積算価格とし、それに見合う素地価格を算出するものです。
以上の3方式を比較した場合、原価法と収益還元法は、買い手から見て、事業採算に乗る価格を算出するもので、事業収支計画の中で土地価格を変数として検討することになります。この算出価格と、比較法で客観的に算出される価格との比較により、適性価格が算出されることになります。

 

(2)公的土地評価

比較法により、周辺の適切な取り引き事例を数多く集めるのは、手間と経費がかかります。
そこで、おおいに活用したいのは、国、もしくは地方自治体が実施する公的土地評価です。具体的には、@公示地価、A都道府県地価調査(基準地価)、B相続税路線価、C固定資産税評価額があります。このうち、@公示地価とA都道府県地価調査(基準地価)はポイントごとの具体的評価ですが、B相続税路線価は道路ごとの評価で、その道路に接している標準的な画地の価格を示しています。C固定資産税評価額は固定資産税の計算の根拠になるもので、実勢価格とは開きがありますが、全国全ての土地の評価額を知ることができます。
この中で、土地価格が右肩上がりの時代には、@公示地価、A基準地価は実勢価格の後追いの状況で、実勢価格の70―80%が実態でした。しかし、バブル崩壊後、土地価格が安定してからは、これらは、実勢価格を上回る地域も数多く見られるようになっていますが、おおむね実勢を示すものと見てよいでしょう。より正確に価格を求めるときは不動産鑑定評価によってください。
また、B路線価は、実勢価格の80%、C固定資産税評価額は、実勢価格の70%を目標に定めることになっています。
@〜Cの価額は、インターネットから入手することができます。


公示・基準地価
路線価
固定資産税評価額(土地)

 

(3)土地価格の簡易算出法

相続税を算定する場合に、相続資産の中で、土地の価格を評価するときに計算する手法を紹介します。
評価方式としては、路線価方式と、倍率方式があります。
路線価方式は、路線価が付せられている道路に接している敷地を、路線価を基本として、接道状況による道路加算、間口奥行きなどの敷地形状などに対する補正係数を乗じ、当該地の鑑定を行う方式です。路線価は、東京都23区をはじめ、大都市中心部のほとんどについては設定されていますが、中小都市などでは、設定されている地域と、設定されていない地域が存在します。
路線価設定されていない地域には、評価倍率が設定されています。評価倍率方式とは、固定資産税評価額を基本とし、この評価倍率をかけて評価額を算出する方式です。したがって、中小都市、町村においては、評価する敷地が、いずれの地域に分類されているかを判定する事がまず必要となりますが、ビル事業が成立するような地域では、路線価が整備されていると考えてよいでしょう。
路線価
路線価による相続税資産評価手法の土地価額算定プログラムをPM-NETでは提供しています。
PM-L
このプログラムにより得られた評価額は、相続税評価額を算定する根拠として、そのまま使う事ができますし、これを、80%で割り込んだ値を実勢価格と見ることもできます。
また、次に述べるような方法で利用することができます。

@相対的な土地の評価

共同ビルや、再開発など複数の地権者がビル事業を行う場合、従前の土地などの権利にたいする持ち分比率を出す必要があります。その場合、それぞれの地権者の持ち分毎に、このプログラムによる評価をする事により、標準地を100とした、相対的な数値を算出することができます。
また、地権者毎の個別評価をした場合の合計と、それらの土地を一体とした評価の比較も可能です。

A公示地価などとの比較

このプログラムにより、同じエリアに属する地価公示地、基準地を選び、評価を行います。同様に計画地の評価も行い、この結果と、公示地価等の比率を求め、公示価格をかければ、計画地の価格が求められます。参考とする公示地価などのポイントが多ければ多いほど、客観性は増すと思われます。
また、実際の取り引き事例などがあれば、同様の手法で比較する事ができます。

 

(4)仲介手数料

新規土地の購入に当たり不動産会社を仲介する場合は、その費用も取得費に算入します。仲介手数料としては、建設省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受け取ることができる報酬の額」によると、売買又は交換の仲介の場合は、依頼者双方のそれぞれから受け取れる金額は、当該売買の金額が200万円以下 5/100、200万円〜400万円以下 4/100、400万円を超える金額 3/100となっています。したがって、売買価格の3%プラス6万円が上限です。





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